なぜAIコンサルが恋愛記事を? 現場の心を動かす「ENFP的マネジメント術」の裏話

なぜAIコンサルが恋愛記事を? 現場の心を動かす「ENFP的マネジメント術」の裏話

「え、ミズさん(私の名前です)が書いたんですか、この記事? ENFPの恋愛? なんでまた…畑違いじゃないですか?」

先日、あるクライアントの担当者、佐藤さん(30代、しっかり者の女性です)に、私が趣味で書いた例の『ENFPの恋愛、徹底解説』という記事を見られてしまい、目を丸くされました。無理もありません。普段の私は、工場の生産ラインの効率化だの、AIを使った需要予測システムの導入だのと、およそ恋愛コラムとは無縁の世界で生きていますから。

でもね、私に言わせれば、工場の改革も、AI導入も、そしてENFPとの恋愛も、根っこは驚くほど似ているんですよ。

それは、「人の心を動かし、行動を変える」ということ。

どんなに優れたシステムや正論も、それを使う「人」の心が動かなければ、ただの鉄の箱、ただの理想論で終わってしまいます。プロジェクトの現場では、経営陣の熱い想いと、現場の冷めた現実がぶつかり合うなんて日常茶飯事。その「温度差」を埋めるのが、私の仕事の醍醐味であり、一番の苦労どころなんです。

今日は、その恋愛記事の裏側で、私がどんな現場を思い浮かべていたのか。マネジメントとコミュニケーションにまつわる、ちょっと泥臭い裏話をさせてください。これは、机上の空論ではない、現場で汗と涙(と、たまに怒号)が飛び交う中で見つけた、生々しい「人心掌握術」の記録です。

「可能性」を語らずして、人の心は動かない:頑固なベテラン職人の心を溶かしたあの一言

ある地方の部品メーカーさんでの話です。長年の勘と経験で成り立つ「匠の技」が自慢の会社でしたが、その技術継承がうまくいかず、生産性も頭打ち。そこでAIを導入し、熟練工の作業データを解析して、若手でも高品質な製品を作れるようにしよう、というプロジェクトが立ち上がりました。

プロジェクトの担当者は、意欲あふれる佐藤さん。しかし、現場の壁は厚かった。特に、工場で一番の腕を持つベテランの鈴木さん(60代)は、新しいシステムに猛反発です。

「んだ、コンピューターなんかに、おれの目が盗めっでのが? 30年やってきたこの手の感覚が、数字で分がってたまるか。無駄なごどすんなえ」

事務所で開かれた説明会で、鈴木さんは腕を組み、そっぽを向いたまま。正論は通用しません。「このシステムを導入すれば、生産性が15%向上し、不良率が5%低下します」なんてスペックの話をしても、彼の心には響かない。それどころか、「俺たちの仕事を奪う気か」と、どんどん心を閉ざしてしまいます。

佐藤さんは困り果てていました。
「どうしましょう…。鈴木さんが協力してくれないと、現場が動きません。ロジックで説明しても、暖簾に腕押しで…」

私は彼女にこう言いました。
「佐藤さん、鈴木さんはね、スペック(条件)で動く人じゃないんですよ。彼が動くのは、自分の仕事に『誇り』と『未来』を感じた時です。あの記事、思い出してください。『ENFPはスペックではなく、「この人といたら、どんな面白い未来が待っているだろう?」というワクワクする物語に惹かれます』って書いたでしょう?あれ、鈴木さんみたいな職人気質の人にも、実はそっくりそのまま当てはまるんです」

私は翌日、鈴木さんが一人で作業をしている昼休みに、缶コーヒーを2本持って現場へ向かいました。

「鈴木さん、一服どうです?」
「…なんだ、まだいたのが」
「昨日、鈴木さんの言葉を聞いて、ハッとしたんですよ。確かに、この手の感覚は数字じゃ表せない。俺たちがやろうとしてるのは、鈴木さんの技術を『盗む』ことじゃないんです」
「…ほだら、なんだでの」

私は一呼吸おいて、ゆっくりと語りかけました。
「鈴木さんのその『手の感覚』を、AIに覚えさせて、”鈴木さんモデル”を作りたいんです。そうすれば、若手が迷った時に『こういう時は、鈴木さんならどう判断するだろう?』って、AIが教えてくれるようになる。まるで、鈴木さんの分身が、24時間、若手の隣で指導してくれるようなもんです」

鈴木さんは、初めてこちらを向きました。

「それにね、今まで毎日同じ作業の繰り返しだった時間に、少し余裕が生まれるかもしれない。その時間で、鈴木さんがずっと頭の中で温めてきた『新しい部品のアイデア』を形にしたり、若手に直接、言葉でしか伝えられない『本当のコツ』を教えたりする時間が作れたら…面白くないですか? この工場から、”鈴木さん発”の、誰も見たことがないような新製品が生まれるかもしれないんですよ」

私は、システムの機能(スペック)ではなく、システムがもたらす未来の「可能性」を語りました。鈴木さんの技術が、未来永劫、この工場で生き続けるという「物語」を提示したのです。

しばらく黙っていた鈴木さんが、ぼそっと呟きました。
「…おれの分身、が…」
「ええ。鈴木さんの技が、この会社の『伝説』になるんです」

その日から、鈴木さんの態度は少しずつ軟化していきました。そして一週間後、彼は若手の一人を連れて、私のところにやってきたのです。
「…おい、この前の話だがな。おれの分身、作ってみでけろ。こいつさも、手伝わせっからの」

これは、物造りの現場に限った話ではありません。どんな組織でも、「現状維持」という引力は強力です。その引力に逆らって変革のロケットを打ち上げるには、「効率化」という燃料だけでは足りない。「面白そう」「未来が変わりそう」という、人の心を燃え上がらせる「ワクワク」という着火剤が、絶対に必要なんです。

感情のジェットコースターを乗りこなす「仕組み」の力

プロジェクトが軌道に乗り始めると、次なる壁がやってきます。それは「メンバーのモチベーション維持」という、見えざる敵との戦いです。

特に、新しい物好きでアイデア豊富なメンバーほど、最初の熱量はすさまじいのですが、地道なデータ入力やテストが続くと、途端に失速することがあります。これも、あの記事で書いたENFPの『感情のジェットコースター』とそっくりです。

「高揚期(ハイ)」には素晴らしい意見が飛び交うのに、「内省期(ロー)」に入ると会議で誰も発言しなくなり、プロジェクトの進捗がピタッと止まる。この波に、マネージャーである田中さん(40代)はほとほと手を焼いていました。

「先週まであんなに盛り上がってたのに、今週はみんなシーンとしちゃって…。どうも一体感がないというか、推進力が安定しないんですよ」

感情ややる気といった、目に見えないものに頼っていると、プロジェクトは必ず不安定になります。愛情だけで長続きしない恋愛と同じですね。だからこそ、「仕組み」で支える必要があるんです。

私は田中さんに提案しました。
「田中さん、毎週月曜の朝イチで、たった15分の『週次チェックイン』を導入しませんか? アジェンダは3つだけです」

  1. 今週のGood & New: この1週間であった「よかったこと」「新しい発見」を一人ずつ共有する(ポジティブな雰囲気作り)
  2. 今週のHelp!: 今、一人で抱えている「ちょっと困っていること」を正直に話す(課題の早期発見と心理的安全性の確保)
  3. 今週のワクワク: 今週、自分が担当するタスクの中で「一番楽しみなこと」を宣言する(未来への期待感を共有)

最初は「そんなことで変わるのか?」と半信半疑だった田中さんも、他に手がないからと導入してくれました。

効果は覿面でした。

それまで「ロー」の状態だったメンバーが、「Help!」で「実はここのデータ移行で詰まってて…」と打ち明けると、別のメンバーから「あ、それ私、前の部署で似たような経験ありますよ。後で教えますね」という助け舟が出る。Good & Newで「鈴木さんが、新しいシステムの操作、全部覚えてくれました!」という報告があれば、チーム全体が「おおー!」と盛り上がる。

この短い習慣は、チームに驚くべき変化をもたらしました。

  • 感情の波の平準化: 個人のモチベーションの浮き沈みが、チーム全体のポジティブな雰囲気でカバーされるようになった。
  • 心理的安全性の向上: 「助けて」と言える文化が生まれ、問題が大きくなる前に解決できるようになった。
  • 当事者意識の醸成: 「今週のワクワク」を宣言することで、各々が自分のタスクに意味を見出し、主体的に取り組むようになった。

これは、まさに恋愛記事で紹介した『毎週の絆を深める「週次チェックイン」』のビジネス応用版です。情熱や一体感という曖昧なものに頼るのではなく、コミュニケーションを「仕組み化」することで、チームという関係性は驚くほど安定し、強くなるのです。

「誰にでも優しい」キーパーソンの本心を見抜き、プロジェクトを動かす方法

最後の難関は、他部署との連携でした。特に、購買部のキーパーソンである課長が、なかなかの曲者だったのです。彼は非常に社交的で、誰に対しても「いいですね!」「全面的に協力しますよ!」と笑顔で言ってくれる。まさに、あの記事の『“人間モテ”タイプ』です。

しかし、いざ具体的な依頼をすると、「いやー、今ちょっと他が立て込んでましてね」「前向きに検討します」と、のらりくらり。一向に話が進みません。佐藤さんも、彼の言葉を信じて待ってしまい、何度もスケジュールが遅延していました。

「あの課長、いつも『やる』って言ってくれるのに、全然動いてくれないんです…。もう、何が本音なのか分かりません」

私は佐藤さんに言いました。
「佐藤さん、彼は『誰にでも優しい』んです。でも、その優しさには優先順位がある。私たちが見抜くべきは、彼の『本命サイン』ですよ」

恋愛記事では、本命サインとして「時間の質の変化」や「未来の会話に『あなた』が登場する」を挙げました。これをビジネスに置き換えると、こうなります。

  • 時間の質の変化 → 彼の「最も貴重な時間」を、我々のために割いてくれるか。
  • 未来の会話 → プロジェクトの成功後の未来を、他人事ではなく「自分事」として語るか。

私たちは作戦を立てました。ただ「お願いします」と頭を下げるのではなく、彼をプロジェクトの「当事者」に引きずり込むのです。

次の打ち合わせで、佐藤さんはこう切り出しました。
「課長、今日はお願いではなく、ご相談がありまして。このシステムが導入されたら、購買部さんの業務も大きく変わると思うんです。そこで、このプロジェクトが成功した3年後、購買部がどうなっていたら『最高』か、課長の理想の未来像を、ぜひお聞かせいただけないでしょうか」

私たちは、彼の部署のメリットや、彼自身の功績に繋がるような「未来の物語」を、彼自身に語ってもらう場を作ったのです。

最初は戸惑っていた課長も、私たちが熱心に彼の話に耳を傾け、彼のアイデアをホワイトボードに書き出していくうちに、次第に前のめりになっていきました。

「そうだな…そうなったら、うちの部もただのコストセンターじゃなくて、会社の利益を生み出すプロフィットセンターになれるかもしれないな…」

彼の口から「うちの部も」という言葉が出た瞬間、私は佐藤さんと目配せしました。これが「本命サイン」です。彼は、このプロジェクトを「自分事」として捉え始めたのです。

その打ち合わせの終わり、彼は自らこう言いました。
「よし、分かった。この件は私が責任を持って進めよう。来週、うちの部のエースを二人、このプロジェクトに専任でつけるから」

「誰にでも優しい」人に対応するには、こちらも同じ土俵で優しさを競っても意味がありません。彼らにとっての「特別な存在」になること。つまり、彼らのビジョンやメリットと、こちらのプロジェクトを深く結びつけ、「あなたにとって、これは他人事ではないんですよ」と気づかせるアプローチが、鉄壁の守りを崩す唯一の鍵なのです。

まとめ:すべての仕事は、人の心を動かす冒険である

長々と語ってしまいましたが、私が伝えたかったことは一つです。

物造りも、AI導入も、企業改革も、突き詰めれば「人」に行き着きます。そして、「人」はロジックだけでは動きません。

  • スペックではなく、ワクワクする「可能性」に心惹かれ、
  • 感情の波に揺れ動きながらも、安定した「仕組み」を求め、
  • 大勢の中の一人ではなく、「特別な関係」を築きたいと願っている。

まるで、恋するENFPのようでしょう?

だから、もしあなたが今、職場やプロジェクトで人の動かし方に悩んでいるなら、一度、恋愛の心理学にヒントを求めてみるのも面白いかもしれません。

あなたの目の前にいる、頑固な上司や、気まぐれな部下、協力してくれない他部署のあの人も、その心の奥底には、理解され、認められ、共に面白い未来へ向かいたいと願う、一人の人間がいるのですから。

さあ、あなたの職場という名の冒険の旅で、最高の物語を紡いでいってください。その羅針盤は、意外と身近なところに隠されているのかもしれませんよ。

免責事項
※本記事における「ENFPの恋愛、徹底解説」などの記述は、一般的な性格タイプ論や公開情報を参考にしたものであり、特定の心理検査(例:MBTI®など)や診断機関による公式な診断結果を示すものではありません。